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2026.04.09コラム

裁量労働制をわかりやすく解説|専門型・企画型の違いから2024年改正・勤怠管理の実務まで

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「裁量労働制を導入したいが、専門業務型と企画業務型の違いが今ひとつ整理できない」「2024年4月の改正で手続きが変わったと聞いたが、具体的に何をすればいいのか」--そんな疑問を抱えている人事・労務担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
裁量労働制は、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる代わりに、あらかじめ定めた「みなし労働時間」で賃金を算定する制度です。労働基準法第38条の3(専門業務型)と第38条の4(企画業務型)に根拠を持ち、導入には厳格な手続きが求められます。
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、専門業務型裁量労働制の導入企業割合はわずか2.1%、企画業務型は1.0%にとどまります。制度自体の認知は広がっているものの、要件の複雑さや法的リスクへの懸念から、導入に踏み切れない企業が大半です。
この記事では、裁量労働制の基本的な仕組みから、専門業務型20業務の一覧、企画業務型との導入手続きの違い、みなし労働時間と割増賃金の計算例、2024年4月改正のポイント、そして勤怠管理システムを活用した実務運用まで解説します。




目次

1. 裁量労働制とは?制度の基本をわかりやすく整理
2. 専門業務型裁量労働制----対象20業務の一覧と導入手続き
3. 企画業務型裁量労働制----導入のハードルが高い理由
4. みなし労働時間の仕組みと割増賃金の計算例
5. 2024年4月改正の4つのポイント----何が変わったのか
6. 裁量労働制でも勤怠管理は必須----打刻・労働時間把握の実務
7. 裁量労働制に関するよくある質問(Q&A)
8.「勤労の獅子」で裁量労働制の勤怠管理をスムーズに
9. まとめ

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1. 裁量労働制とは?制度の基本をわかりやすく整理

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1-1. 裁量労働制の定義―「みなし労働時間制」の一種

裁量労働制とは、労働基準法が定める「みなし労働時間制」の一種です。実際に何時間働いたかに関係なく、労使であらかじめ定めた時間を労働したものとみなして賃金を計算します。
みなし労働時間制には3つの類型があります。事業場外みなし労働時間制(労働基準法第38条の2)、専門業務型裁量労働制(同法第38条の3)、企画業務型裁量労働制(同法第38条の4)の3つです。裁量労働制は後ろの2つを指します。
たとえば、みなし労働時間を「1日8時間」と定めた場合、実際の労働が6時間であっても10時間であっても、賃金計算上は8時間働いたものとして扱います。ただし、これはあくまで賃金計算の話であり、深夜労働(22時〜翌5時)や法定休日労働の割増賃金は別途発生する点に注意が必要です。

1-2. 裁量労働制と他の制度との違い

裁量労働制は、似た名前の制度と混同されがちです。ここで整理しておきましょう。

裁量労働制 vs フレックスタイム制
フレックスタイム制は労働者が始業・終業時刻を自由に決められる制度ですが、実労働時間に基づいて賃金を計算します。裁量労働制はみなし時間で計算するため、実労働時間と賃金が連動しません。

裁量労働制 vs 固定残業代(みなし残業代)制
みなし残業代制は、一定時間分の残業代をあらかじめ固定額で支払う賃金制度です。労働時間そのものをみなすのではなく、残業代の支払い方を固定しているだけなので、実残業時間が固定分を超えれば差額の支払いが必要です。一方、裁量労働制は労働時間の算定方法そのものを変える制度であり、根拠となる法律の条文も異なります。

裁量労働制 vs 高度プロフェッショナル制度
高度プロフェッショナル制度(高プロ)は、年収1,075万円以上の特定の高度専門職を対象に、労働時間規制そのものを適用除外にする制度です(労働基準法第41条の2)。裁量労働制は労働時間規制が適用されたうえで「みなし」を使う制度なので、両者は根本的に異なります。

1-3. 裁量労働制を導入するメリットと注意点

企業側のメリットとしては、人件費の予測可能性が高まること、成果ベースの働き方を推進できること、そして優秀な専門人材の採用競争力が高まることが挙げられます。労働者側にも、業務の進め方や時間配分を自分で決められるという自律性のメリットがあります。
しかし、注意すべき点も多い制度です。みなし労働時間を低く設定しすぎると実質的な残業代カットになりかねず、労働者のモチベーション低下や未払い残業代の請求リスクにつながります。また、裁量労働制であっても労働時間の把握義務は免除されないため、「時間管理が不要になる」という認識は誤りです。この点は後ほど詳しく解説します。

2. 専門業務型裁量労働制―対象20業務の一覧と導入手続き

2-1. 対象となる20業務の一覧

専門業務型裁量労働制の対象は、「業務の性質上、遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務」として厚生労働省令および大臣告示で定められた20業務に限定されています(労働基準法第38条の3第1項第1号、労働基準法施行規則第24条の2の2第2項)。
2024年4月の改正で、従来の19業務に「銀行又は証券会社におけるM&Aアドバイザリー業務」が追加され、現在は20業務となっています。

20業務の全リスト
① 新商品・新技術の研究開発、人文科学・自然科学に関する研究
② 情報処理システムの分析・設計
③ 新聞・出版の取材・編集、放送番組制作の取材・編集
④ 衣服・室内装飾・工業製品・広告等のデザイン考案
⑤ 放送番組・映画等のプロデューサー・ディレクター
⑥ コピーライター
⑦ システムコンサルタント
⑧ インテリアコーディネーター
⑨ ゲーム用ソフトウェアの創作
⑩ 証券アナリスト
⑪ 金融工学等を用いた金融商品の開発
⑫ 大学における教授研究(主として研究に従事するもの)
⑬ 銀行又は証券会社におけるM&Aアドバイザリー業務(2024年4月追加)
⑭ 公認会計士
⑮ 弁護士
⑯ 建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)
⑰ 不動産鑑定士
⑱ 弁理士
⑲ 税理士
⑳ 中小企業診断士

注意したいのは、この20業務に該当しなければ専門業務型は適用できないという点です。たとえば、SEやプログラマーであっても、仕様書どおりにコーディングするだけの業務は「分析・設計」に該当しないため対象外となります。「②情報処理システムの分析・設計」は、ニーズの把握から要件定義・設計までを主体的に行う業務に限られます。

2-2. 導入に必要な手続き―労使協定の締結と届出

専門業務型裁量労働制を導入するには、労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがない場合は労働者の過半数代表者と書面による労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
労使協定に定めるべき事項は以下のとおりです。

(1)対象業務の範囲
上記20業務のうち、自社で適用する業務を具体的に特定します。

(2)みなし労働時間
「対象業務に従事した労働者は1日○時間労働したものとみなす」という形で定めます。

(3)対象業務の遂行手段・時間配分に関する具体的な指示をしないこと
裁量労働制の本質は「労働者の裁量に委ねる」点にあるため、使用者が業務遂行の方法や時間配分について具体的な指示を出さないことを明記します。

(4)健康・福祉確保措置の内容
対象労働者の勤務状況を把握し、健康と福祉を確保するための措置を具体的に定めます。2024年改正で内容が拡充されました(詳細は後述)。

(5)苦情処理に関する措置
裁量労働制に関する苦情の申出先、処理方法を定めます。

(6)本人の同意と同意撤回の手続き(2024年改正で追加)
対象労働者本人から個別に同意を得る手続き、および同意を撤回する手続きを定めます。

(7)同意しなかった場合の不利益取扱いの禁止(2024年改正で追加)
同意しなかったことを理由に、解雇や配置転換などの不利益な取扱いをしない旨を定めます。

(8)記録の保存
同意・同意撤回の記録を、労使協定の有効期間中およびその満了後5年間(経過措置として当面は3年間)保存します。

(9)協定の有効期間
3年以内が望ましいとされています。

3. 企画業務型裁量労働制―導入のハードルが高い理由

3-1. 対象業務と対象事業場の制限

企画業務型裁量労働制は、「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」であって、業務遂行の手段や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要があり、使用者が具体的な指示をすることが困難な業務に適用されます(労働基準法第38条の4第1項)。
専門業務型のように業務が列挙されているわけではなく、4つの要件(企画・立案・調査・分析)をすべて満たす必要があります。
たとえば、経営企画部で中期経営計画の策定に携わる業務や、人事部での全社的な人事制度の企画・分析業務がこれに該当し得ます。
ただし、対象事業場にも制限があります。個別の製造作業や工程管理のみを行う事業場、あるいは本社の具体的な指示を受けて個別の営業活動のみを行う支店は、企画業務型を導入できません。事業運営の重要な決定が行われる事業場----つまり本社や事業本部レベルの拠点が主な対象となります。

3-2. 労使委員会の設置と5分の4以上の決議

企画業務型の導入手続きは、専門業務型よりも格段に厳格です。労使協定ではなく、労使委員会を設置し、委員の5分の4以上の多数決による決議が必要です。
労使委員会は、労働者を代表する委員が半数以上を占める構成でなければなりません。さらに、委員は労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合は過半数代表者)に任期を定めて指名される必要があります。
決議で定める事項は、対象業務、対象労働者の範囲、みなし労働時間、健康・福祉確保措置、苦情処理措置、本人の同意手続き、不利益取扱いの禁止、記録の保存、決議の有効期間(3年以内が望ましい)です。決議後、所轄の労働基準監督署への届出も必要になります。
この複雑な手続きが、企画業務型の導入率が1.0%にとどまっている最大の理由です。

3-3. 専門業務型と企画業務型の比較一覧

両制度の違いを一覧で整理します。
【根拠条文】専門業務型=労基法第38条の3/企画業務型=労基法第38条の4
【対象業務】専門業務型=厚労省令・告示で定めた20業務に限定/企画業務型=企画・立案・調査・分析の4要件をすべて満たす業務
【対象事業場】専門業務型=制限なし(全事業場)/企画業務型=事業運営の重要決定が行われる事業場に限定
【導入手続き】専門業務型=労使協定の締結+届出/企画業務型=労使委員会の設置+5分の4以上の決議+届出
【本人の同意】専門業務型=2024年改正で必須に/企画業務型=従前から必須
【定期報告】専門業務型=不要/企画業務型=6か月以内ごとに1回、労基署へ報告

4. みなし労働時間の仕組みと割増賃金の計算例

4-1. みなし労働時間の決め方

みなし労働時間は、対象業務を遂行するために通常必要な時間を基準に設定します。「通常必要な時間」とは、対象業務を遂行するために客観的にみて必要とされる時間であり、恣意的に短く設定することは許されません。
実態として1日9時間の労働が常態であるにもかかわらず、みなし労働時間を8時間に設定している場合、その協定は実態に即していないとして無効と判断されるリスクがあります。労使協定の締結に際しては、対象労働者の実際の労働時間を調査したうえで、合理的な水準に設定することが不可欠です。

4-2. みなし時間が8時間を超える場合の時間外割増

みなし労働時間を1日9時間と定めた場合、法定労働時間(8時間)を1時間超過するため、その1時間分には25%以上の時間外割増賃金が発生します。
【計算例】月給30万円・月所定労働日数20日・みなし労働時間9時間の場合
・1時間あたりの基礎賃金=300,000円÷(20日×8時間)=1,875円
・1日あたりの時間外割増=1,875円×1.25×1時間=2,343.75円
・月あたりの時間外割増=2,343.75円×20日=46,875円
この金額は毎月固定で発生します。みなし労働時間を法定労働時間超に設定する場合は、36協定の締結・届出も必要です。

4-3. 深夜労働・休日労働の割増は別途発生する

裁量労働制であっても、深夜労働(22時〜翌5時)と法定休日労働には割増賃金が発生します。みなし労働時間でカバーされるのは所定労働日の所定時間帯の労働だけであり、深夜・休日は実労働時間ベースで別途計算しなければなりません。
【割増率の整理】
・みなし時間超過分(時間外):25%以上
・深夜労働:25%以上(みなし時間超過と重なれば50%以上)
・法定休日労働:35%以上(深夜と重なれば60%以上)
深夜や休日の実労働時間を正確に把握するためには、勤怠管理システムで打刻記録を取得し、時間帯ごとの労働を自動集計できる仕組みが必要です。「裁量労働制だから打刻は不要」という認識は完全な誤りであり、この点を次のセクションで詳しく説明します。

5. 2024年4月改正の4つのポイント―何が変わったのか

5-1. ポイント1:専門業務型でも「本人の同意」が必須に

改正前、本人の同意は企画業務型にのみ求められていました。2024年4月以降は、専門業務型でも対象労働者から個別に同意を得なければ裁量労働制を適用できません。口頭ではなく、書面やメールなど記録に残る方法で同意を取得する必要があります。
さらに、同意を撤回する手続きも労使協定に定めることが義務付けられました。撤回の申出があった場合、必要以上に長い期間を置かず、原則として申出時点で制度の適用を解除することが適当とされています。同意しなかった労働者、あるいは同意を撤回した労働者に対して、解雇や不利益な配置転換を行うことは禁止です。

5-2. ポイント2:健康・福祉確保措置の拡充

改正前から両制度に義務付けられていた健康・福祉確保措置について、2024年改正で具体的な内容が拡充されました。

従来からの措置例
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・対象労働者の労働時間が一定時間を超えた場合の医師面接の実施
・年次有給休暇のまとまった日数の連続取得

改正で追加・強化された措置
・対象労働者の勤務状況とその健康状態に応じた制度適用の解除
・健康・福祉確保措置として医師の面接指導を講じる場合は、事業場の産業医等を選任し、その者が実施する仕組みとすること

単に「措置を講じます」と協定に書くだけでは不十分であり、具体的にどの措置をいつ発動するかを明確にしておく必要があります。たとえば「月の在社時間が200時間を超えた場合は翌月に医師面接を実施する」というレベルまで落とし込みます。

5-3. ポイント3:対象業務にM&Aアドバイザリーが追加

専門業務型の対象業務に、20番目として「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務」(いわゆるM&Aアドバイザリー業務)が追加されました。
追加の背景には、銀行・証券会社のM&A部門では案件ごとに業務量や進行スケジュールが大きく異なり、一律の時間管理になじみにくいという実態がありました。ただし、対象は銀行又は証券会社に限定されており、コンサルティング会社やPEファンドのM&A部門は対象外です。

5-4. ポイント4:継続導入でも新たな手続きが必要

2024年3月末時点で裁量労働制を既に導入していた事業場であっても、2024年4月以降に制度を継続するには、改正後の要件を反映した新しい労使協定の締結(専門業務型)または労使委員会の決議(企画業務型)を行い、改めて労働基準監督署に届け出る必要がありました。
既存の協定をそのまま使い続けることはできないため、「うちはもう導入済みだから問題ない」という認識は危険です。まだ対応していない事業場がある場合、速やかに新しい協定の締結と届出を完了させてください。

6. 裁量労働制でも勤怠管理は必須―打刻・労働時間把握の実務

Firefly_Gemini Flash_フラットデザインのビジネスイラスト。タイムレコーダーの前に立つ専門職(白衣の研究者風)の人物がICカードをかざしている。タイムレコーダーの画面にチェックマークが表示されて 646056.png

6-1. 労働時間の把握義務」は裁量労働制にも及ぶ

裁量労働制は「みなし労働時間で賃金を計算する」制度であって、「労働時間を管理しなくてよい」制度ではありません。ここを混同している企業が少なくないのが実情です。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日策定)は、裁量労働制の適用者についても「健康確保を図る必要があることから、労働時間の状況を把握する必要がある」と明記しています。
さらに、2019年4月施行の働き方改革関連法で改正された労働安全衛生法第66条の8の3は、事業者に対し、裁量労働制の適用者を含むすべての労働者の「労働時間の状況」を客観的な方法で把握する義務を課しました。タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間記録など、客観的なデータに基づく把握が求められます。

6-2. 勤怠管理システムで押さえるべき3つの管理項目

裁量労働制の対象者に対して勤怠管理システムで管理すべき項目は、主に3つあります。

(1)出退勤の打刻記録
何時にオフィスに来て何時に退館したか--この基本データが健康管理の出発点となります。裁量労働制だからといって打刻を免除してはいけません。むしろ、みなし労働時間と実労働時間の乖離を把握するために不可欠なデータです。

(2)深夜労働・休日労働の実時間
先述のとおり、深夜・休日の割増賃金は実労働時間ベースで計算するため、何時から何時まで深夜帯に労働したか、法定休日に何時間労働したかを正確に記録する必要があります。勤怠管理システムの時間帯自動判定機能を活用することで、手計算のミスを防げます。

(3)月間の総労働時間と健康管理アラート
裁量労働制の適用者が過重労働に陥っていないかを検知するため、月間の在社時間(または健康管理時間)を集計し、一定の閾値を超えた場合にアラートを出す仕組みが望ましいとされています。たとえば、月の在社時間が200時間を超えた場合に管理者と産業医に通知する―という運用です。

6-3. 実務で陥りがちな3つの落とし穴

落とし穴1:「打刻不要」と周知してしまう
裁量労働制の対象者に「出退勤の打刻は不要です」と案内してしまうケースがあります。上記のとおり、労働安全衛生法上の把握義務があるため、打刻は必須です。対象者にも「裁量労働制であっても打刻は義務」と明確に伝えましょう。

落とし穴2:深夜・休日の割増計算を失念する
「みなし労働時間でカバーされている」と思い込み、深夜割増や休日割増を支払っていない----これは未払い残業代の請求につながります。勤怠管理システムで深夜帯・休日の労働を自動フラグ化し、給与計算に連動させる設定を入れておくべきです。

落とし穴3:みなし時間と実態の乖離を放置する
みなし労働時間を8時間と設定しているのに、対象者の在社時間が恒常的に10時間を超えている場合、制度の前提が崩れています。裁量労働制は「実態に即したみなし時間を設定する」ことが制度の根幹であり、乖離が常態化していれば労使協定そのものの有効性が問われかねません。定期的に在社時間を分析し、必要に応じてみなし時間の見直しや業務量の調整を行うことが、適正な運用のカギです。

7. 裁量労働制に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 裁量労働制が適用されると、何時に出社しても何時に退社してもよいのですか?
A.原則として、始業・終業時刻の指定はできません。しかし、「出社義務がゼロ」とは限りません。労使協定や就業規則で「コアタイム的な会議への出席義務」を定めることは可能です。ただし、あまりに細かく出退勤を拘束すると裁量労働制の趣旨に反し、制度自体が無効と判断されるリスクがあります。裁量の範囲と会社のルールのバランスを慎重に設計してください。

Q2. 裁量労働制の対象者が深夜や休日に働いた場合、残業代は発生しますか?
A.発生します。裁量労働制のみなし労働時間でカバーされるのは、所定労働日の法定労働時間帯の労働だけです。深夜労働(22時〜翌5時)には25%以上、法定休日労働には35%以上の割増賃金を、実労働時間に基づいて支払う義務があります。

Q3. 裁量労働制の対象者にも36協定は必要ですか?
A.必要になるケースがあります。みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える設定の場合、その超過分は時間外労働にあたるため、36協定の締結・届出が必要です。また、法定休日労働が発生する場合も同様です。

Q4. 裁量労働制の適用者が同意を撤回したら、すぐに通常の労働時間管理に戻さなければなりませんか?

A.はい。2024年4月改正で、同意撤回の手続きが労使協定の必須記載事項となりました。撤回の申出から適用解除までの期間を必要以上に長くすることは不適当とされており、原則として申出時点で制度の適用を解除することが求められます。撤回後は通常の労働時間管理に切り替え、実労働時間に基づく賃金計算を行ってください。

Q5. 裁量労働制の対象業務に従事しながら、それ以外の業務も兼務している場合はどうなりますか?

A.裁量労働制は対象業務に従事する時間についてのみ適用されます。対象外の業務が主たる業務となっている場合、裁量労働制の適用自体が不適切と判断されるおそれがあります。対象業務に「主として」従事していることが要件であり、兼務の割合が大きい場合は適用を見直す必要があります。

8.「勤労の獅子」で裁量労働制の勤怠管理をスムーズに

裁量労働制の運用で求められるのは、「みなし労働時間で賃金を計算しながら、実労働時間は正確に把握する」という二重の管理です。手作業で行えば煩雑になりがちなこの管理を、勤怠管理システムの機能で効率化できます。
クラウド型勤怠管理システム「勤労の獅子」は、拡張項目を上限なく作成できる柔軟な設計を持っています。裁量労働制の対象者に対しては、みなし労働時間と実労働時間を並行して記録し、乖離が発生した場合に管理者へアラートを送る設定が可能です。
深夜帯や休日の労働も自動で判定・集計されるため、割増賃金の計算漏れを防げます。オリジナルのエラー設定を使えば、「月の在社時間が○時間を超えた場合に警告を表示する」といった健康管理ルールも自社独自で構築できます。
専任の勤怠コンサルタントが要件定義から設定代行、運用レクチャーまで一貫してサポートするため、裁量労働制のような複雑な制度設計でも安心して導入を進められます。導入サポート満足率98%、継続率99%が、長く使われ続けるシステムであることを裏付けています。

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9.まとめ

裁量労働制の要点を振り返ります。

・制度の基本:裁量労働制はみなし労働時間制の一種で、専門業務型(20業務限定)と企画業務型(企画・立案・調査・分析業務)の2類型がある。

・導入手続き:専門業務型は労使協定の締結と届出、企画業務型は労使委員会の設置と5分の4以上の決議が必要。いずれも対象労働者本人の同意が必須。

・みなし労働時間と割増賃金:みなし時間が法定労働時間を超える場合は時間外割増が毎月固定で発生する。深夜労働・法定休日労働の割増は実労働時間ベースで別途計算。

・2024年改正:専門業務型での本人同意の義務化、健康・福祉確保措置の拡充、M&Aアドバイザリー業務の追加、既存導入事業場の手続きやり直しが主な変更点。

・勤怠管理の実務:裁量労働制であっても労働時間の客観的な把握義務がある。打刻記録の取得、深夜・休日の割増計算、みなし時間と実態の乖離モニタリングの3点が運用の柱。
裁量労働制は正しく運用すれば、企業と労働者の双方にメリットをもたらす制度です。しかし、要件を満たさない適用や労働時間管理の不備は、未払い残業代の請求や労基署の是正勧告につながりかねません。まずは自社の対象業務と現行の運用実態を改めて確認し、2024年改正に対応した労使協定・決議の整備、そして勤怠管理システムによる客観的な労働時間把握の仕組みづくりから着手してください。

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